はじめに 人はじつに、自分が馬であり、自分が自分の調教師であり厩務員であり、そして騎手でもある。自分の心身のほんとうの状態ほど、当人にとって知りにくいものはない。「馬体」は絶好調のはずなのに、いざ勝負所で、押しても叩いても動かないことがある。道中折り合って、直線の追い出しも間違いはなかったのに、ゴールでかならず、測ったように、わずかに差されるとか、届かないとか、そんなことが続く。そのうちに掲示板どころか、一ケタの着順にも入らなくなる。 (古井由吉『こんな日もある 競馬徒然草』講談社、2021年、239-240頁;初出は『優駿』2007年6月号) このたび、競馬と声優をこよなく愛するライターの二人を招いて、話題沸騰中の『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)に関するオンライン鼎談を実施した。 スペシャルウィーク、サイレンススズカ、トウカイテイオー、メジロマックイーンなど、実在の競走