旧字の「國」は人名用漢字なので、子供の名づけに使うことができます。新字の「国」は常用漢字なので、やはり子供の名づけに使うことができます。つまり、「国」も「國」も出生届に書いてOK。でも、「国」と「國」の両方が子供の名づけに使えるようになったのには、かなり微妙な歴史が背景にあるのです。 太平洋戦争中の昭和17年6月17日、国語審議会は文部大臣に標準漢字表を答申しました。標準漢字表には旧字の「國」が収録されていて、さらに、囗の中に王を書く「囯」がカッコ書きで添えられていました。つまり「國(囯)」となっていたわけです。標準漢字表では、「囯」はカッコ書きになっているものの、一般に使用して差し支えないということでした。そして、新字の「欧」が当用漢字になったように、「囯」も同じく当用漢字になれるはずでした。しかし日本の敗戦によって、囗の中に王を書く「囯」という漢字は、数奇な運命を辿ることになります。