六角精児さん(俳優) 1962年生まれ。7月3〜7日の扉座公演「アトムへの伝言」(東京・紀伊国屋ホール)に出演。=松本敏之撮影 ■さえない青年に自分を投影 『苦役列車』 [著]西村賢太(新潮文庫・420円) この本を知ったのは、芥川賞受賞後、週刊誌や新聞に西村賢太さんに関するインタビューや記事がたくさん出ていて、それを読んでいたときです。やたらと「家賃滞納」という言葉があって、「前の大家にばれたら困る」とか、そんな内容もあったような気がします。ぼくも昔、長い間、家賃を滞納したことがあるので、気になって、本屋で平積みになっているのを買ったんです。芥川賞の作品を受賞後のタイミングで買ったのは初めてでした。 一気に読みました。中卒で将来への希望もなく、劣等感を抱え、岸壁の冷凍倉庫で日雇いをしているさえない19歳の北町貫多。アパートで独り暮らし。彼女もいない。そんな青年の、日々のやりくりが書かれて