パリ市から北東23キロに位置するシャルル・ドゴール空港。そこから市内に向かう郊外高速列車に乗ると、のどかな田園の風景が小さな家屋の連なりに変わり、都市の風景が立ちあらわれたかと思うと、突如、コンクリートの高層団地が視界に飛び込んでくる。「花の都パリ」のイメージとはおよそかけ離れた光景だ。 1950年代後半から70年代初頭に建てられ、老朽化の進んだこれらの団地には、アフリカ大陸の旧植民地出身者をはじめとする低所得の移民・マイノリティーが集住しており、イスラム教徒が多い。フランスで「郊外(バンリュー)」という単語が想起するのは、このような地区だ。 郊外に排除の空間が現れたのは最近ではない。産業化に伴い、英国や米国では富裕層・中間層が都市から郊外に転出した。だがフランスでは、行政が大規模な都市再開発をパリなどで行った結果、富裕層・中間層が都市にとどまり、貧困層が郊外に吐き出された。 中でも首都北