今回の記事を担当する特任研究員の岡田です。 先日,ネットでイギリスでの歴史科目のカリキュラム見直しをめぐる論争についての記事を見かけたので,今回はその話を取り上げてみたいと思います。 話は2010年,保守・自由民主連立政権誕生に伴い,新しい教育相の下で歴史科目のナショナル・カリキュラム(公立校に適用される統一カリキュラム,日本の学習指導要領に相当)の大改訂を行う方針が発表されたことに始まります。その目的は,これまでのディベート中心の考えさせる教科から最低限の歴史的事実を覚えさせることに主眼を置く教科に変えようというものでした。 この発表がきっかけとなり,改訂の是非やどのような歴史が教えられるべきかという問題について,新聞・TVなどのメディアを賑わす一大論争になりました。その論争の主役を担ったのが,『風景と記憶』などの著作で有名なサイモン・シャーマと保守派の歴史家ニーアル・ファーガソンです。