本書は,ユニークな一次史料に基づいた厳密な歴史分析と,経済社会において人々の行動を動機づけるさまざまな誘因(インセンティヴ)を数理的に分析するゲーム理論を統合する画期的な試みである. 1989年の経済学界は,ノースウェスタン大学出身の若い研究者が書いた博士論文の話題で持ちきりであった.経済学の博士号のほかに歴史学の修士号をも合わせ持つこの研究者は,カイロ旧市街のゲニーザと呼ばれる驚くべき文書貯蔵庫から発掘された膨大なヘブライ語書簡を丹念に読み解き,11世紀の地中海遠隔地貿易に従事したユダヤ人貿易商が,ゲーム理論の数理モデルから導かれる「評判メカニズム」「くり返しゲームのトリガー戦略」を使って協調を達成していたことを明らかにしたというのである.この若き研究者こそが,本書の著者であるアブナー・グライフであり,その博士論文とその後の研究の進展は,経済史のみならず,経済学一般や政治学における制度と
ゲーム理論の発展に複雑系理論的な壮大なビジョンを融合させた刺激的な一冊 『もっとも美しい数学 ゲーム理論』 トム・ジーグフリード著・冨永 星訳 文藝春秋社・2008年. 評者:川越敏司(公立はこだて未来大学、VCASIフェロー) 本書は、経済学の始祖アダム・スミスから説き始めて、ゲーム理論の生みの親フォン・ノイマン、そしてジョン・ナッシュへと発展していくゲーム理論の歴史を丹念に追っていき、行動ゲーム理論、さらにはネットワーク理論や複雑系、経済物理学や社会物理学にまで説き及ぶ壮大構想を下に書かれている。そのキーワードは心理歴史学、統計力学、そして混合戦略である。 個々の人間の行動は予測がつかないかもしれないが、社会全体の法則性は、平均として統計的に把握できるとするケトレーの社会科学における業績が、やがてマクスウェルの統計力学へと受け継がれていく。こうして始まった統計的方法が、自然科学の発展を
ゲーム理論的概念枠組みを用いた社会科学統合の方法論、組織におけるグループレベル認知構造とガバンナンスの間の補完性
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