YouTubeで“Friedrich Gulda”と“Light My Fire”をキーワードに検索すると、フリードリヒ・グルダが超絶技巧のピアノで「ハートに火をつけて」を披露している映像を目にすることができる。「ハートに火をつけて」は、言うまでもなく、1967年に発表されたあのドアーズのヒット曲だ。 フリードリヒ・グルダ(1930〜2000)は、60年代後半の時点ですでにクラシックの世界では巨匠という評価を得ていた。しかし、70年前後を境に、彼はクラシックとジャズの演奏を両立させる道を選んだ。なぜかというと、グルダは自分が“20世紀”の後半――音楽史的に言うと、“ジャズとロックの時代”に生きていることを鋭く自覚していたからだろう。だからこそ彼は、時代の大きなうねりの中に進んで身を投じ、さまざまな批判を浴びながらも、独自の道を追求し続けたのだ。 このような意味で、グルダをクラシックの世界で