谷川俊太郎「腑に落ちる」(朝日新聞2012年10月01日夕刊) 谷川俊太郎「腑に落ちる」は、とても奇妙な詩である。どこが奇妙かというと、なかなかむずかしくて(まだ何を書きたいのか、私にはわかっていないので、こういう書き方になる)、さて、どうしようか。とりあえず引用してみる。 分かったのかと私が言うと 分かったと言う 腑(ふ)に落ちたかと念を押すと 腑に落ちましたと答える 腑ってどこだと私が問うと どこかこのあたりと下腹を指す そこには頭も心もないから 落ちてきたのは言葉じゃない それじゃいったい何なんだ 分かりませんと当人は さっき泣きじゃくったせいか つき物が落ちたみたいに涼しい顔 このとき、「私(谷川、と仮定しておく)」はだれかと向き合っているのだろうか。だれかに、たとえば息子の賢作に「分かったのか」と言ったのだろうか。賢作は「分かった」と言ったのか。 具体的に考えようとすると、どうも