自然災害に伴う被害で最も痛ましいのは「犠牲者の発生」だろう.自然災害の原因となるハザード(地震,大雨など)は自然の現象だが,ハザードにより生じた「被害」は人間社会の現象である.自然災害に伴う犠牲者は自然の力によるもので誰のせいでもない,という考え方もあるが,一方で,誰かが対応を誤ったために犠牲者が発生したのだ,という考え方もあり,裁判で争われることもある. たとえば2009年兵庫県佐用町の水害では,避難勧告の発令時刻が遅かったなどとして犠牲者のご遺族の一部が町を相手に損害賠償の訴訟を起こした.結果的に神戸地裁姫路支部は訴えを棄却し,原告,被告ともに控訴せず判決は確定している.