八ケ岳山麓(さんろく)の空に鈍色(にびいろ)の雲が広がった今月8日のたそがれ時。山荘の屋根をたたく雨が、高橋卓志(たくし)和尚(69)と参列者が唱える般若心経と、染み入るようなセッションを奏でた。 本棚の前に置かれたひつぎの中で、千葉の自宅から搬送された司書の鈴木均(ひとし)さん(享年46)が安らかな顔で永久の眠りについている。「均は思い通りに生き抜いた」。和尚の言葉には、「そうだ、そうだ!」と合いの手が入る。14人の身内が思い出を笑顔とぬくもりの涙で紡ぐ通夜だった。 「(鈴木家の)山荘で本に囲まれて旅立ちたい」。メラノーマ(悪性黒色腫)が脳転移して末期と宣告された均さんが和尚に持ちかけたのは1月8日。長野県松本市にある臨済宗「神宮寺」の住職を務める和尚は、48歳で早世した均さんの父親とは同窓の友で均さんの成長を幼い頃から見守ってきた。
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