食肉業界を取り巻く状況が厳しくなっているのをご存じだろうか。消費者として、畜産農家の苦労はもはや他人事ではない。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が語る。 * * * 牛、豚、鶏などの畜産を取り巻く状況が厳しい。しかもそれぞれ違う原因なのが余計に厄介だ。 まずは牛だ。このところ和牛の価格が急騰している。それもA-5、A-4といった高級和牛ばかりではない。それほど高級でない和牛が値上がりしているのだ。例えばB-3という中程度の牛肉の卸売価格は一昨年から昨年にかけて1.5倍以上に。一昨年と今年を比較すると1.9倍にもなっている。一般消費者向けの流通業者は「卸値がここまで高いと、当然販売価格に反映せざるを得ません。ただ、消費者の理解を得られるかどうか……」と顔を曇らせる。 食べ物の価格変動の要因はシンプルだ。原価と流通量に尽きると言っていい。現在の和牛価格の高騰は、需要増に加えて「原価」で