前回、中国の地方から来た観光客の世界を“昭和30年代”に見立てた。だったら、中国経済の最前線・上海で暮らす人たちはどうなのか。 彼らは“日本の1980年代”を生きている。それがぼくの見立てである。 一般に中国の改革開放以降の経済発展は3つの時期に分けられる。まず、1980年代に始まる華南地域を中心に経済開発を進めた初期、1992年のトウ小平「南方訓話」を機に上海に中心が移転する中期、そして2001年のWTO加盟以後、現在に至る第3期だ。 この第3期に入り、上海はどうしようもなく、“日本の1980年代”に似てきたのだ。 それをぼくが最初に実感したのは、2004年2月に上海で開催された中国初の本格的な海外旅行展「上海旅遊資源博覧会」だった。 そこでは、上海をはじめとした中国沿海部に暮らす人たちの海外旅行やレジャー熱の高まりを強く感じた。超高層ビル街・浦東の郊外にある巨大な展示場「上海新国際博覧