映画『白い暴動』の冒頭で、ステージに上がる前の緊迫感と血気盛んなオーディエンスの姿に多くのパンクスが心躍るかもしれない。しかしこのタイトルから推測されるような、日本でもお馴染みのパンクバンド、ザ・クラッシュのドキュメンタリー映画ではない。 『白い暴動』は、人種差別反対を唱えたRAR「ロック・アゲインスト・レイシズム(Rock Against Racism)」の運動を追った回顧録だ。語り手として画面に現れたのはバンドでもオーディエンスでもなく左寄りの芸術家「レッド・サウンダース」。RARは1976年にカメラマンとして活動していた彼が、ザ・クラッシュのライヴ撮影へ訪れた際、その15分間の演奏に圧倒されたところから始まる。 1970年代当時、財政政策問題を抱えていた英国の抱える負債はついに危険水準を超えてしまう。IMF(国際通貨基金)の救済を受け入れたことで市民の暮らしは一変。賃金・社会保障の切