牟子『理惑論』(20)仏伝⑨ たいし いわく ばんぶつは むじょうなり 太子曰く、万物は無常(1)なり。 太子は、〔白浄(浄飯)王に次のように〕答えた。「あらゆるものは、永遠なものではありません。 【無常】固定した実体がなく、とどまることなく移り変わること。 そんする あるも まさに ほろぶべし 存する有るも当に亡ぶべし。 存在するものは、いつか必ず壊れるのです。 いま みちを まなび じっぽうを どだつせんと ほっすと 今道を学び、十方(1)を度脱(2)せんと欲すと。 だから、〔わたくしは〕今、真理を学び、この世に生きるものたちすべてを救いたいと願っているのです。」 【十方】東・西・南・北、東南・西南・東北・西北、そして上・下を併せた十の方角。この十方にそれぞれ衆生の住む世界があるとされる。 【度脱】漢訳仏典においては、「度」は「渡」と同じ意味でつかわれている。迷いの世界からさとりの世界