ポケットに手を入れて、ふてくされ気味に歩く。えっちらおっちら、短い足を前へ、前へ。 「よう」 一匹がいった。 「もうこのへんでいいんじゃないか」 「いいんじゃないかって、なにが?」 先頭を歩く彼が振り返りもせずにいう。 「別に。いってみただけさ」 「そうかい」 「今度は、ちょっと訊いてみたりなんかしても、いいか?」 「好きにすればいい」 「俺たち、どこへ向かってるんだ?」 「西さ。太陽が沈む方へ」 「へえ。俺はてっきり、あれは朝日で、こっちは東と思ってた」 「そういうことも、あるかもしれない」 「ないとはいいきれない」 「そういうことさ」 「そういうことか」 少し遅れ気味の一匹がいう。 「なあ、歩くのは疲れた」 「そうだな」 先頭の彼は振り向かずに頷いた。 「歩くのを止めないか」 「それじゃあ、飛んでいこうか」 「いいね」 「どうせ飛ぶなら一万七千四百九十七マイルパーアワーぐらいで飛びたい