――日本人には危機に際して、「起きては困ることは、起こらないことにする」悪癖があるんです。 福島原発事故のあとの半藤一利の言葉(文藝春秋2011年7月号)である。半藤は近現代史、とりわけ戦争の記録や証言を通じて日本人の習性をみた。半藤はこうも言っている。 ――「想定外」という言葉は「無責任」の代名詞ですよ。「起きたら困ること」が起きた後には、とめどない無責任が残るんです。(前掲) これらの半藤の言葉は、コロナ禍にあっても東京オリンピック開催に向かう、菅義偉の所業にも重なり合う。菅首相は4月12日、「感染の波は想像を超えたもの」と国会で答弁した。そのような災禍の最中でありながら、コロナと五輪は別問題だと言い続け、また五輪開催はワクチン接種を前提としないと言いもした。今の日本はとめどない無責任の渦中にある。 「日本人選手が金メダルを取れば盛り上がる」という楽観論 起きたら困ることは起きないこと