東日本大震災以後は『国策民営の罠』等で原発問題に取り組んできた印象の強い竹森俊平氏だが、新著はひさびさに本来のフィールドに帰還した感がある。 「ユーロ」という通貨政策が政治的にも経済的にも無理筋の企てだったという視座は、『中央銀行は闘う』から一貫するものだ。無理を通せば道理が引っ込む。道理の消えた世界が呼び寄せるのは、もちろん混沌にほかならない。 もっとも、これは著者独自の視点というわけではなく、たとえばクルーグマンの『さっさと不況を終わらせろ』でもそうした考えは示されている。本書の大半は、ユーロのどこがどう無理筋なのか、その無理を通した(通している)ことによってどのような道理が引っ込められ、そしてどんな混沌たる危機が起きた(起こっている)のか、という記述に割かれているので、くわしくは直接あたられたい。 しかし、竹森氏の思考がおもしろいのは、今そこにあるユーロ圏の経済危機を前にして「いった