ヌーヴェルヴァーグを思い起こさせる実験性が世界的に評価された、80~90年代に隆盛した「台湾ニューシネマ」。その旗手といわれた天才監督、楊徳昌(エドワード・ヤン)が59歳で亡くなったのが、2007年のことだった。本作『クーリンチェ少年殺人事件』は、ヤン監督の遺された作品群のなかでも代表作だと評価される。しかしながら、日本では権利の関係で、初公開以来25年の間DVD化されず、望まれながらも観ることが困難だった映画である。そのことも本作の価値を高め、日本のコアな映画ファンの間で「幻の作品」となっていた。 本作を愛するマーティン・スコセッシ監督が設立したフィルム・ファウンデーションと、クライテリオン社が、このたび共同で行ったフィルム修復事業により、「4Kレストア・デジタルリマスター版」として本作『クーリンチェ少年殺人事件』 は甦り、日本でもめでたく再上映されることとなった。さらに、公開版より長い