流れ出る生卵などを写真と見まがうリアルさで描き、作品が美術の教科書にも掲載された画家・上田薫さんは、いま94歳。2年ほど前から認知症になり、神奈川県の自宅で療養しながら描き続けている。かつての精巧な描写から一変した素朴な味わいの作品が、個展などで話題となっている。 光と潤いに満ちたスプーン上のゼリーなど従来の表現に続き、色と形が交じった木立やラフな鉛筆の自画像、かわいい昆虫や魚の絵が並ぶ。 高松市美術館で9月18日まで開催中の個展には、スーパーリアリズムと呼ばれる作品群とともに、2021年以降の療養中にスケッチブックなどに描いた素朴な小品が30点以上出ている。 同館が所蔵するリアルな大作2点は人気が高く、今回の個展につながった。一方で全く異なる近作も。石田智子・学芸員によれば、鑑賞者からは「かわいい! 面白い!」「軽快な絵」といった感想があるという。 東京芸術大で油絵を学んだ上…