いかなる暴力も正しくない。戦争は暴力の津波である。だから、この世に正しい戦争など存在しない。 正しい戦争の存在を認めないと、暴力の範囲を最低限に抑制すべく規律正しく穏当に遂行された戦争と、無際限の冷酷かつ残虐な行為を伴った戦争とを区別することができなくなる、と言われることがある。「そもそも戦争そのものがよくない」と言うことで、現実にある戦争を道徳的な方向へと引き上げることを不可能にしてしまう、とされるのである。 しかし、この論理はまるっきり間違えている*1。私たちが「そもそも人を殺すことはよくないことだ」と言ったからといって、瀕死の重傷を負って既に助かる見込みのない人から数時間の苦痛を取り去るために命を奪うことと、自分が楽しむために他人の精神や肉体を弄んだ挙句に死へ導いたり、その死体に意図的に損傷を加えたりすることとを区別できなくなると考える人はいない。 殺人を道徳的に正当化することはでき
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