米国では従来、経済活動に対する政府の介入は極力避けるべきとする「小さな政府」の考え方が主流だった。政府が勝者を選ぶべきではないとの経済理念が背景にある。しかし、先鋭化する中国との競争に加えて、新型コロナ禍によるサプライチェーンの混乱を受けて、重要製品に限っては可能な限り自国か同盟・友好国から成るサプライチェーンの構築が急務との認識が超党派で形成され、政府による積極的な産業政策の推進が支持される機運が醸成された。民主党は支持基盤の労働組合に訴求する上で打ち出しやすく、共和党もトランプ前政権以降は労働者層の支持を獲得すべく躍起になっている。こうしたパラダイムシフトが米国の産業政策を後押ししている。バイデン政権で成立した投資関連の法律に焦点を当てて、経緯と見通しをまとめる。 米中対立とパンデミックが警鐘に トランプ前政権時の関税戦争を皮切りに激化した米中対立の初期段階では、米国の主眼は貿易赤字の