一 平成十八年に出版した小著『あっ、螢 歌と水辺の風景』(六花書林)の「後記」に私は「引用歌・引用文については、その都度、出典を明らかにした。引用箇所には濁点を付け、句点を設けるなどしたが必ずしも徹底していない。特に仮名遣いの誤用は直すことによって失うものがあるような気がしてならなかった」と書いた。あのときのためらい、逡巡、それらが綯い交ぜになった思いとは何だったのだろう。 具体的には狂歌と良寬だった。狂歌は『狂歌大観』(明治書院)・『近世上方狂歌叢書』(和泉書院)・『江戸狂歌本選集』(東京堂出版)に拠った。まず『狂歌大観』の凡例を見てみる。「文字」は「①漢字・仮名ともに、現行通用の字体に従うことを原則とした」「②ふり仮名は、底本に従った」「③ふり仮名・送り仮名の中に、片仮名・平仮名が混用される場合は、適宜その一方に統一した」「④特殊な略体・合字・草体・連字体は、すべてそのよみに従って現行
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