書籍『東大教授が世界に示した衝撃のエビデンス 魚はなぜ減った? 見えない真犯人を追う』から紹介 第1回 宍道湖と私 著者は卒業論文、修士論文、学位論文すべて、宍道湖をテーマに書いた。卒論では宍道湖の248箇所から採取された泥の中の多毛類(=釣りエサにするゴカイを含む動物群)について、どんな種類が何匹いるかを明らかにした。高校の生物部でウミウシ類の研究もしていた著者は、大学に入って自主研究で大阪湾の多毛類を採取し、国立科学博物館の専門家に弟子入りして多毛類の種類を見分ける技術を身につけていた。 多毛類の種類を決めるには、イトゴカイの仲間だと足の毛をピンセットで引き抜いて顕微鏡で形を観察し、ゴカイやイトメの仲間だとアゴを引き裂いて中の吻(ふん)を取り出し、ついている突起を数えるなど、かなり手間のかかる作業を要する。1地点に仮に10匹いたとしても、2480回そういった作業を行なわねばならない。泥