【日本の現代】開発主義の暴走と保身:金融システムと平成経済 池尾和人、NTT出版、p.316、\2400 実にクールな本である。論旨は明快だし、抑えた書き口に共感が持てる。高度経済成長が終焉に至った理由や、失われた10年における経済状況の分析、BIS規制の真の意味に関する解説は、経済学に疎い評者の腑にもすっと入ってくる。ただし、タイトルと内容とのギャップは気になるところ。売りためには致し方ない面もあるが、ちょっとキャッチーに過ぎるように思う。本の帯には、「いま解明される『失われた10年』の真実」とあるが、こちらの方が的を射ている。 筆者の論点は、日本の市場は質が低いという問題を抱えており、失われた10年を見つめなおし、高度な市場を形成することが喫緊の課題だということ。よく持ち出される直接金融と間接金融の話も論点となっている。市場の質が低いがゆえに信頼されず、さらに質が低下するという悪循環に