気鋭のシナリオライター、作家として活躍する東出祐一郎さんがこのほど、新作小説『オーギュメント・アルカディア』(朝日新聞出版)を上梓した。デジタルとリアルの境目が分からなくなった未来の都市を舞台に、デジタルの少女を守る忍者の末裔が主人公のエンターテインメント大作だ。デジタルとアナログを描くことで身体性やリアリズムを追求したという作者の狙いに文芸評論家の藤田直哉氏が迫った。 ――本作を書くにあたって、着想はどの辺りから得られたのですか? 東出 これはけっこうわかりやすくて(苦笑)、2008年ごろだったと思うのですが、動画サイトで拡張現実(AR)の初音ミクを動かしている動画を見たんですよ。ただ動くだけなら驚かなかったんですが、よく見るとフィルター越しとはいえ、リアクションがあるということに驚いたんです。ただのホログラフィックだったら今までに何度も見たことがあるし、いわゆるバーチャル系のネットゲー