1冊だけ、である。現段階で単行本になったのはこれ1冊、「ゲームブック」と言う一過性の騒ぎの中で出すことの出来た唯一の本、もちろん再版の見込みもない。 「ゲームブック」に関しての知識はそれほどない。スティーブ・ジャクソンとイアン・リビングストンの「火吹き山の魔法使い」が現代教養文庫から出されたのが、自分の記憶の中での始まりである。本の中に短いパラグラフを並べ、選択肢で先に進める。これだけならあれほどのブームにはならなかっただろう。ジャクソン/リビングストンの優れていた点は、その中に点数と乱数を使ったゲームの「システム」を取り入れたことと、(個人的にはこちらが重要だと思っているが)きちんとした「小説」の要素を盛り込んだことだ。 これはゲームブックの本質、その成立の根幹に拘る問題である。と言うか、そもそもこの辺りについての自覚がないままに、ただブームに乗って粗製濫造したのが、あのような短期間で衰