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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp (29)

  • 第3世界並みイタリア社会の闇

    世界8位の経済大国で、数々の文化遺産にも恵まれているイタリア。だがこの国は女性の権利や若者の失業といった社会問題に対する取り組みでは途上国並みにお粗末だ。種々の統計がそれを物語っており、そのため最近では国際社会から辛辣な批判を浴びるようになった。 確かにイタリア経済は不況に見舞われてはいるが、社会問題の悪化は財政難のせいだけではない。現に経済通であるモンティ首相の下、国内経済は少しずつ改善してきた。にもかかわらず、非難は高まるばかりだ。 イタリア国家統計局の年次報告書によると、24歳以下の失業率は36.5%に達し、若年層の100万人以上が失業中だ。意外なことに高卒者より大卒者のほうが失業率は高い。低学歴のほうが単純労働に抵抗感がないからだろう。 女性の雇用状況も悪い。給与が男性に比べて平均15%低いばかりか失業率も高く、南部では女性10人のうち6人が就労していない。 イタリアの女性は家庭内

  • 最強ドイツに忍び寄るユーロ危機の余波

    ドイツの10月の失業率は09年以来3年ぶりに上昇し、6.9%を記録した。9月だけで失業者が2万人も増えた計算になる。 連邦雇用庁のワイゼ長官は「年末に向け、欧州全体の景気後退の影響を免れることはますます困難になる」と語る一方で、「労働市場は依然堅調だ」と強調した。しかしユーロ圏経済は今も深刻な危機に直面している。先週発表のスペインのGDPはマイナス成長。ユーロ加盟各国の財務相は先週、不安定なギリシャの支援問題を話し合った。 フランスのモスコビシ財務相はドイツのショイブレ財務相との会談後の記者会見で、ユーロ圏諸国による「短期債務の共有化」を提案。「債務問題には共同で当たらなくてはならない。この仕組みをつくるには、全加盟国の支持が必要だ」と語った。 フランスは以前から「ユーロ圏共同債」の創設を提唱してきたが、ドイツは他国の債務を肩代わりさせられるのを嫌い、一貫して反対してきた。モスコビシは「ユ

  • インド大停電が照らし出す電力不足の闇

    インドという国には、何であれ「最大」の語が付きまとう。先週の大規模停電も史上最大だった。影響を受けたのは6億5000万人以上。世界の総人口のほとんど10%だ。 大規模な送電網のトラブルがあった翌日の7月31日、インドの北部と東部を中心に広い範囲で電力の供給が途絶えた。電車も地下鉄も止まり、商店は閉まり、病院は手術の予定を遅らせた。電力は何時間かで復旧したが、忘れるべきでない事実が1つ。21世紀の今もインド国民の3分の1が電力なしで暮らしており、暗闇は彼らの生活の一部だという事実だ。 真っ暗な中でろうそくを囲む人々の写真が世界中に配信され、皮肉にも今回の停電で照らし出されたのは、この国の抱える根深い構造的な問題──インフラや教育、医療といった公共財の深刻な不足だ。数億のインド国民が、今なお開発から取り残されている。 今こそ政治家は行動を起こすべきだ。腰の重い連邦政府の尻をたたき、改革へと駆り

  • 少子化対策のヒントは出産天国フランスにあり

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔8月15・22日号掲載〕 日人女性がフランスに魅せられる理由はいくつもある。美術館、おいしいワイン......。私はパートナーのおかげで、もう1つの理由に気付いた。昨年彼女が妊娠し、私たちは現実的な理由からフランスではなく東京の病院で出産することにした。女性が子供を産むに当たって、日はとても安全な国。ところが看護師たちは素晴らしいのに、日で出産するのはフランスよりはるかに大変だった。 私の友人の日人女性は昨年5月にマルセイユの病院で出産した。分娩室に入ったらボブ・マーリーのレゲエ音楽ががんがん流れていたそうだ! これが日の病院だったら不安になりそうだが、スタッフがプロ意識に徹していたので安心したという。「2時間で終わった。全然痛くなかった」と友人は当時を振り返る。産後の回復も早く3日間の入院で済んだ。 フランスでは普通、出産するのはパリのホ

  • 財政破綻で巨大ゴキブリがナポリを占拠

    破産の末路 行政サービスが滞ると、世界有数の観光地もこの通り Ciro Messere-Reuters 巨大なゴキブリの姿を思い浮かべただけでむしずが走るタイプの人は、この記事を読まないほうがいい。イタリアのナポリを訪ねるのも、当分はやめたほうがいいだろう。今のナポリは巨大ゴキブリの大群に、文字どおり占領されているからだ。 市内の下水道で卵からかえった大量のゴキブリが地上に進出してきたのは今月上旬のこと。債務危機のあおりで清掃局の予算が削減されたため、この1年間は一度も下水の清掃や消毒をしなかったせいだ。 もともとナポリのゴミ収集システムは非効率で評判が悪く、ゴミの都と揶揄されてきた。しかも制度変更でゴミ収集車が早朝に来ることになったため、飲店などは夜中のうちにゴミを出さねばならない。結果、腐りかけのべ物が何時間も、下水溝の上に放置されることになった。しかも高温多湿。ゴキブリにとっては

  • スペインを追い詰める造反フィンランド

    欧州債務危機。見飽きたパターンの繰り返しだ。 まず、欧州各国の指導者が話し合う。市場の圧力を受けて金利が上昇し、政府の借入コストが増大する。指導者がまた話し合う。以下、同じことの繰り返し──。 今週もそうだ。先週は落ち着いていたスペインとイタリアの国債利回りが、今週になって急上昇。7月9日のスペインは国債利回りは7%を超え、イタリアも6%以上という危険水域に達した。 欧州連合(EU)のユーロ圏諸国は9〜10日に財務相会合を開き、スペインへの300億ユーロの金融支援を月末までに決定することで合意した。 「非常に懸念している」と、米ウェールズ・ファーゴ銀行の地域投資責任者ジェフ・サベージは経済ニュースサイト、ブルームバーグに語っている。「スペインにとって国債利回り7%は持続不可能な水準だ。恐ろしい問題だ。重要な貿易相手国が経済危機に陥ったら、アメリカ企業の収益にも影響が出る」 今回、スペイン

  • ネットの「核兵器」ACTAの脅威

    海賊版をダウンロードしたらあなたも逮捕される?──そんな国際条約が欧州議会で否決されたが、世界は大きく取り締まり強化に動いている ネットの自由に対する「核兵器」とも呼ばれてきた、知的財産権の保護に関する国際条約「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」が4日、欧州議会で否決された。478対39の大差だった。反対派がオンラインとオフライン両方で長い抗議活動を行った成果だ。 ACTAをめぐる議論は08年から続いている。海賊版や違法ダウンロードの取り締まりを目的としたこの条約のバックについているのは、タイムワーナーやソニー、ウォルトディズニーなど大手エンターテイメント企業が作る業界ロビー団体だ。 しかしACTAによってネットにおける表現の自由が侵され厳しい言論弾圧につながりかねないとの懸念から、大きな抗議運動が起こった。仮に欧州議会で批准されていたら、ヨーロッパ中のネットサービス会社が自社のネッ

  • 「その日」は超えられるのか? ―香港返還15周年

    香港に来ている。着いた途端、空港で落ち合った友人から「台風が来てるよ。直撃するかも」と言われた。 中国大陸の突端、ちょうどフィリピンと向かい合う位置にある香港は年間数回、激しい台風に襲撃される。面積が狭いためか直接上陸はあまりないが、ルートがそれて広東省に直接上陸した場合でもかなり激しい暴風に見舞われることが多い。 だが、そんな香港には優れた台風警報システムがあり、気象台の役目も兼任している香港天文台がその観測に基づいて警報を出し、街はその警報(最初の頃、気球を使って市民にそれを知らせていたので「風球」と呼ばれる)に基づいて行動する。 まず、台風が香港から800キロ以内に入り、今後香港への影響が予想される場合、「1号風球」が発令される。この時点での市民の反応は「ふうん、台風が近くに来てんのね」というレベルだ。それが、近海で強風が吹くようになり、風速毎時約41kmから62kmになると「3号強

  • 信用不安スペインが賭ける大麻ビジネス

    オランダを訪れる外国人旅行者の楽しみの1つが失われつつある。今月から、「コーヒーショップ」と呼ばれる大麻カフェの多くで、外国人の大麻購入が禁じられた。現時点では南部の州に限定されているが、来年からは首都アムステルダムを含む国内すべてに適用される予定だ。 そこに目を付けたのが、信用不安がくすぶるスペイン。同国は、オランダを当てにしてきた「大麻観光客」の受け皿になり得るだろう。カタルーニャ自治州のラスケラ村では先月、住民投票によって大麻の個人使用を推進する団体に栽培のための公用地を貸すことに決めた。実入りのいい大麻栽培によって財政赤字を減らせる上に雇用も創出できるという思惑だ。 大麻の個人所有は犯罪ではないが スペイン当局は現在、その計画の合法性について検討中だ。大麻に対して比較的寛容なスペインだが、オランダのコーヒーショップのような小売りは許可されていない。個人所有は犯罪ではないが、捕まれば

  • ユーロ圏が頼れる国はニッポン!

    次の震源 からくも国債の入札を切りぬけたスペイン、マドリッドの証券取引所(4月19日) Susana Vera-Reuters 世界各国の窮地を救ってきた国際通貨基金(IMF)が「借金」を必要とする時、頼れるのはどの国だろう? 答えは日とスウェーデンとデンマーク。どうやらアメリカは頼りにならないようだ。 IMFは、ユーロ危機による世界経済の悪化に備えて資金基盤の強化を進めている。4月19日に開幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に先立ち、日は17日、ヨーロッパ以外の国では初めてIMFへ600億ドルを拠出すると表明した。 日が先陣を切って追加支援に乗り出すことについて、安住淳・財務相は「日が貢献を表明をすることで相当数の国がそれぞれに拠出を表明してくれるのは間違いない」と期待をにじませた。「IMFの基盤強化は重要なことだ。確実に危機の収束につなげていくため、(IMF

  • 重慶スキャンダルはどこまで広がる?

    発売中のNewsweek日版4月25日号のカバー特集は中国を揺るがす重慶スキャンダルについてリポートした『不安な中国』。誌北京支局長メリンダ・リウ、豪シドニー・モーニング・ヘラルド紙とエイジ紙の北京特派員ジョン・ガーノー、在米中国政治学者ミンシン・ペイという気鋭のチャイナウォッチャー3人が、今回の薄煕来失脚事件の背景や今後の展開を分析しています。特にガーノーの記事「温家宝の逆襲が物語る路線対立」は、30年間に及んだ温家宝首相と薄の確執を、温の「師匠」にあたる胡耀邦総書記の遺族の証言を基に再現しています。 今からちょうど6年前のことだ。同僚と2人で台湾に出張取材しているとき、当時のニューズウィーク台北特派員に現地の女性記者を紹介された。6年も前の酒の席の話で、ほかにどんな会話をしたかほとんど記憶にないのだが、それでも彼女から聞いた「留学先で薄一波の孫と会ったことがある」という言葉は今も

  • 血塗られたキリスト教徒狩りが始まった

    大きな犠牲 カイロで起きたイスラム教徒との衝突で死亡したコプト教徒の葬儀(昨年3月) Amr Dalsh-Reuters 欧米諸国でイスラム教徒が襲撃されたという話や、昨年の「アラブの春」の民衆革命でイスラム教徒が独裁者と勇敢に戦ったという話は、しばしば話題になる。 しかしその陰で、まったく別の戦いが起きている。その知られざる戦いでは、何千人もの命が奪われている。 世界のイスラム諸国で、多くのキリスト教徒が信仰を理由に殺されているのだ。拡大を続けるこのジェノサイド(大量虐殺)に、世界はもっと危機感を抱くべきだ。 イスラム教徒を犠牲者や英雄扱いする描き方は、真実のせいぜい一面しか伝えていない。西アフリカから中東、南アジア、オセアニアに至るまで、イスラム教徒が多数派を占める国々では近年、少数派のキリスト教徒に対する暴力的迫害が頻繁に起きるようになった。 政府や政府の息の掛かった勢力が教会を焼き

  • 貴族首相が変える世界とイギリス

    EU内で独自路線を貫きアメリカにはシリア介入を要求。「リベラルな保守」を自任するデービッド・キャメロンの挑戦 デービッド・キャメロンの経歴は、イギリスの上流社会が舞台のテレビドラマ『ダウントン・アビー〜貴族とメイドと相続人〜』の登場人物さながらだ。英国王ウィリアム4世の直系の子孫を父方の祖母に持ち、現女王エリザベス2世とは遠縁の間柄で、母方の祖父は准男爵。名門パブリックスクールのイートン・カレッジ出身で、オックスフォード大学を卒業した。 もっとも生身のキャメロンは、高慢ちきな貴族のイメージとは程遠い。感じが良くて気取りがなく、親しい人々からは「デーブ」と愛称で呼ばれ、スーツとネクタイが大嫌いだ。 上流階級の生まれという事実をしのばせる点はただ1つ。この人物は権力の重荷をやすやすと背負っているらしい。首相に就任してから2年近くがたつ今、キャメロンは就任前より若く見える。こんな首相はイギリスの

  • 反米感情に乗るフランス大統領選

    フランス国民にとって、イランの核開発も中東問題も北朝鮮も地球温暖化も飢餓も、大した問題ではないらしい。フランスの極左によれば、「アメリカこそが世界最大の問題」だ。 フランスをこき下ろすことが米共和党予備選での常套手段だとすれば、4月に大統領選を控えたフランスだって同じ。反米感情はかつてほどではないものの、アメリカの影響力や文化に対してフランス人が抱いている愛憎入り交じった感情が、投票の行方を左右しそうなことは確かだ。 左翼党のジャンリュック・メランションにしろ極右・国民戦線のマリーヌ・ルペンにしろ、仏米の同盟関係に公然と疑問を呈する候補者を支持する有権者はおよそ3分の1に上る。 アメリカに対して最も敵意に満ちた攻撃を展開しているのが、支持率約9%のメランションだ。自著『奴らをつまみ出せ』の中では、底なしの消費と軍事費が支えるアメリカ型の経済モデルは「命取りのからくり」であり、「文明の危機の

  • 抗議の自殺が物語るギリシャ庶民の現実

    厳しい財政緊縮策が続くなか、アテネの路上で政府に抗議する自殺事件が発生。これを機に、市民の不満に再び火がついた 厳しい財政緊縮策が続くギリシャで4日朝、通勤ラッシュの時間帯に悲劇は起きた。首都アテネの中心部にある国会議事堂前のシンタグマ広場で、70代の元薬剤師の男性が銃で頭部を撃ち抜き、命を絶ったのだ。 「威厳ある形で人生を終えるには、こうするしかない。ごみ箱をあさるようにはなりたくない」と、男性の遺書には書かれていた。「未来のないこの国の若者たちはいつか武器を手に取り、国家の裏切り者をシンタグマ広場で吊るし上げにするだろう。1945年にイタリア人がムッソリーニを吊るしたように」 今回の事件をきっかけに、シンタグマ広場では激しい抗議活動が勃発した。BBCの報道によれば、事件のわずか数時間後、数百人の市民が広場に集結して抗議デモを展開。デモ隊は火炎瓶を治安部隊に投げつけ、治安部隊が催涙ガスで

  • 周回遅れでTPPに目覚めたカナダの焦り

    180度転換 カナダのハーパー首相(右)は昨年11月のAPECサミットでTPP交渉参加に舵を切った(左はペルーのウマラ大統領) Jason Reed-Reuters カナダのスティーブン・ハーパー首相は昨年11月、ホノルルで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に際し、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に関心があると公式に表明した。 カナダの姿勢が180度転換したことを示す発言だった。それまでカナダはTPPを遠くから冷ややかに眺めるだけで、前提条件をのまなければ参加できないような交渉には加わらないと明言していた。 カナダはこれまで、TPPの重要性を認識していなかったのだ。TPPは当初、経済規模の小さい4カ国で細々と発足した(ニュージーランド、チリ、シンガポールに加えて、土壇場でブルネイが参加)。08年にペルーで開かれたAPEC首脳会議を契機に拡大交渉が始まった。 アメリカ

  • アマゾンの出版破壊から取り残された日本 | 瀧口範子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

    人は今も「自炊」をしていると聞くたびに、気の毒で仕方がない。台所での自炊ではない。プリント版の書籍を自分で1ページずつスキャンしてデジタルファイルにし、自家製「電子書籍」として利用することを業界関係者は自嘲気味に「自炊」と呼んでいる。テクノロジー先進国の日当に起きているとは思えない、実に奇妙なできごとだ。 そしてそれを考えるたびに、アメリカでアマゾンがやっている文字通りの出版業界の破壊というか、破壊的イノベーションを思わずにはいられない。振り返ってみると、アマゾンは今やアメリカの出版産業をすっかり変えてしまっているからだ。 最初は、もちろんインターネットで書籍を販売することだった。書店を含め、これだけでもかなり大きなインパクトがあったが、電子書籍時代になって、間違いなくそれが加速化しているのだ。 たとえば、かなり安い価格で電子書籍を売り出したこと。また、自費出版したい作家たちに、

    アマゾンの出版破壊から取り残された日本 | 瀧口範子 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
  • インド進出するスタバを待つ落とし穴

    カフェ市場が急拡大するインド市場に参入を決めたスターバックス。8カ月で50店舗オープンを目指すが、一筋縄では行かない理由 米コーヒーチェーン大手スターバックスがインドからコーヒー豆の調達を始めて約10年。そのスターバックスが先ごろ、インドへの進出を決めた。インドのタタ財閥傘下の飲料会社と提携し、今後8カ月で都市部に50店舗をオープンするという。 しかしスターバックスの行く手には、複数の障害が待ち受けている。インドのカフェ市場は拡大中で、競争は激しい。全国のカフェは約1500店に達し、年率30%で増加中だ。後発のスターバックスはインド市場にい込めるのか。 あくまでもコーヒーは添え物 そもそもインドでコーヒー文化を普及させられるのか、という問題もある。過去10年でコーヒー消費量は2倍になったが、基的にインド人は紅茶好きだ。 ではカフェが繁盛しているのはなぜか。エアコンの効いた涼しい空間と軽

  • キリスト教徒の迫害が始まった

    エジプト第2の都市アレクサンドリアのある村で気がかりな事件が起きた。キリスト教の一派、コプト教徒の8家族が自宅を追われ、彼らの家や土地が売りに出されたのだ。コプト教徒は、国内人口の約1割を占める宗教少数派だ。 イスラム教徒が多数を占める世界の国々で今、少数派のキリスト教徒が暴力的な迫害を受ける事件が相次いでいる。エジプトもその1つだ。 アレキサンドリアの村ではここ数週間ほど、あるコプト教徒男性がイスラム教徒女性を誘惑し、恋愛関係になっているという噂が広まり、宗教間の緊張が高まっていた。先月末には、数百人のイスラム教徒住民が男性の自宅や彼が経営する店を襲い、放火する事件が起きた。 2月1日に地元で開かれた調停会議の結果、彼らの安全を保証できないという理由で、コプト教徒の8家族が自宅を退去させられた。人権団体はこれを「集団処罰」と呼んで非難している。 エジプトでは先頃、ムバラク政権崩壊後初とな

  • 即位60年、イギリス人にとっての女王とは

    2月6日、イギリスのエリザベス女王は即位60年を迎えた。僕だけじゃなく大多数のイギリス人が、エリザベス女王以外の君主を知らないというのは、改めてすごいことだと思う。 僕が人生で最初に体験した「歴史的瞬間」は、僕がまだ7歳だった1977年――エリザベス女王の即位25年だった。幼くてまだあまり時間の概念がなかったけれど、それでも25年は長い年月だというのは理解できた。 もちろん、女王の即位25周年は、記録に残したり勉強したりするようなたぐいの厳密な「歴史」ではないだろう。女王が今や50周年も60周年も通過して、さらにこのまま歴代最長記録を塗り替えそうな勢いだから、なおさらだ。でも僕にとってはとても重要な時だった。この即位25周年はまさに、子供の僕が「イギリス政府とは何か」という事実を理解しはじめた年だからだ。 女王の夫がなぜ国王ではないのか(僕は国王になるのが当然だと思っていた)、教えてもらっ