2009年1月号の『フォーサイト』に掲載された一ノ口晴人氏の記事によれば、日本の漁業規制が、漁師たちに歪んだ競争をさせているそうだ。漁師たちは、漁船の船体を新しくするよりは、古い船体に高性能のエンジンやGPSを搭載して、漁場までのスピード競争をしているというのだ(注)。漁師が人よりも早く漁場に着いて漁をしたいと思うのは、当然だと思う人もいるかもしれない。しかし、もし後で説明するような規制がなければ、漁師がそのようなスピード競争に励むのは、必ずしも合理的ではない。 そのことを説明するために、つぎの問題を考えていただきたい。 問題 あなたが漁師だったとしよう。一定の労働時間で、最大の所得を得るにはどのように働くべきだろうか。 (1) 毎日決まった時間に漁に出て、決まった時間漁をする。 (2) 魚が多く取れそうな天候の日に長時間漁をして、そうでない日は他のことをする。 (3) 魚が少ない日に集中