【寄稿】 阪神淡路大震災を振り返って 医療従事者に今,伝えたいこと 吉田 茂(名古屋大学医学部附属病院医療経営管理部准教授) 13年前の1月17日,兵庫県南部で起きた大地震のことを思い出す人は,地元以外では少なくなったことでしょう。その後,日本の各地で比較的大きな地震災害が発生したこともあり,あの阪神淡路大震災の衝撃的な記憶も薄れがちなのかもしれません。しかしながら,当時,神戸市中央区の病院で震度7を経験した者にとっては,今もなお,鮮明に脳裏に焼きついており,おそらく一生涯消えることのない記憶でしょう。 名古屋市の位置する東海地区では,東海地震の不安を抱えていることもあり,災害医療に対する関心は比較的高いと言えます。私も何度か災害医療の専門家の講演を聞きましたが,いつも何か心に引っかかるものを感じてしまいます。その理由は,被災地で災害医療を行い被災者を助けることと,医療従事者自身が被災