評価: ある夜、巨大な膜にすっぽり覆われてしまったため、空から星や月が消え、地球の時間だけが1億分の1の速度になっていた。人類は、太陽が膨張して、やがて地球を呑み込んでしまう運命にあることを知る。SFというと、天文用語や科学用語のてんこ盛りを想像して敬遠しがちだったが、この小説は主役達の感情表現がきっちり描かれていて、最後まで飽きなかった。裕福な家に生まれ、優秀なリーダーの素質を持ち、現代の危機を科学で解明しようとするジェイスン。高圧的な父と酒びたりの母に反発して、宗教に救いを求めるジェイスンの姉・ダイアン。医師というジェイスン寄りの職業を選びながら、ダイアンに惹かれている二人の幼なじみ・タイラー。危機に陥った時に、人間が救いを求めるもの「理性=科学」「感情=宗教」を対照的な姉弟に仮託し、その狭間で揺れるタイラーが人間の象徴のようだ。政治家の暗躍、火星人の出現、謎の病出現による世情不安など