天津から北京に向かう夜の高速道路は、北京に入るあたりで突然の大渋滞に遭遇した。検問である。 私が同乗するセダンの順番が来た。パスポートの提示を求められる。途端に警官の表情が厳しくなる。セダンは検問所の横まで誘導され、私は事務所に連れていかれた。警官がパスポートを凝視しながら、北京滞在の目的、滞在場所、滞在日数を尋ねてくる。カメラの前に立たされながら、日本のビジネスマンが正式に逮捕されたとのニュースが頭をよぎる。 聴取が終わると、警官は表情を和らげてパスポートを返しながら呟いた。「任務なんでね。良い旅を!」 11時過ぎにホテルに着くとドッと疲れが出る。ふと窓外を見上げると下弦の月が煌煌と輝いている。星も瞬く。こんな澄んだ北京の空は何十年ぶりだろうか。 翌朝はもっと驚いた。空は青々と高く、木々の植え込みでは小鳥たちがさえずっている。コロナ禍の余波なのか、生産活動が低調なのか、環境対策が進展して