※編集部注:本記事には『BEASTARS』の物語の展開や核心にふれる記述があります。同作の魅力をより深く味わいたい方には、ぜひコミック本編と本記事をあわせてお読みいただくことをお薦めします。 「加害者」の立場から考える 『BEASTARS』は、2016年から『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて連載されているマンガである。作者は板垣巴留(ぱる)。2018年のマンガ大賞をはじめ数々の受賞歴をもち、19年にはNetflixでアニメ化されている。 わたしたちは現在、多文化主義(multiculturalism)の時代に生きている。いまや程度の差こそあれ、あらゆるフィクション作品が多文化主義に配慮して作られていると言ってよい。『BEASTARS』もまた、その例外ではない。 しかし『BEASTARS』はこの多文化主義に、きわめて特異な角度からアプローチしている。本稿では、あえてこのマンガを多文化主