本書は、自由と平等のトレードオフを軸にして、戦後の世界経済を概観したものだ。平等という言葉には曖昧さが含まれており、著者も指摘するように「法の下の平等」という意味での機会均等は近代社会の絶対条件だが、みんなの所得を同じにする結果の平等は、しばしば自由を侵害し、貧困をもたらす。ところが著者もいうように、「平等」への情熱は一般に「自由」へのそれよりもはるかに強い。すでに手にした自由の価値は容易には理解されないが、平等の利益は多くの人々によってただちに感得される。自由の擁護とは異なり、平等の利益を享受するには努力を必要としない。平等を味わうには、「ただ生きていさえすればよい」(トクヴィル)のである。分配の平等を求める感情が合理的な計算より強いことは、行動経済学の実験でも確かめられている。これは進化の過程で「古い脳」に埋め込まれた本能なので、文化の違いにかかわらず見られる。それが市場経済の基礎にあ