彼女は会うやいなや、いきなり、「漢民族の男とだけは結婚したくないわ!」と宣言した。 大きな切れ長の目に、真っ黒で量が多い髪の毛。それをクレオパトラのように、やや長めのおかっぱで決めている。そういえば、まつ毛の濃さとか、上がり目の目じりの強い線とか、分厚く真っ赤な唇など、クレオパトラを髣髴とさせるものがないでもない。その割りにポロシャツのようなセーターとジーパンというスポーティな姿が、なんとも良い。手首には大粒の瑪瑙(めのう)に糸を通した腕輪と赤い糸を結んでいる。 彼女の名は金香(ジン・シャン)。年は36歳。不動産会社を経営している女傑だ。 「どうしてまた、漢民族の男がいやなの?」 「だって、彼らはいつでも、同時に数名の女の子と付き合っているんですよ。いっつも、どれが良いかを比べてるんです」 「同時に数名と?」 「ええ、みんなそう! 少なくとも私の周りにいる漢民族の男は、残らずそうです。私が