(藤原書店・2100円) ◇さめた眼と言葉の力で過去を捉える 近代前を宗教の時代とするなら、近代以後はイデオロギーの時代と言っていい。人の心を左右のイデオロギーが動かし、その結果、個人も社会も政治もそして国の歴史も左右に激しく振れながら進んだ。 そうした中で、イデオロギーから距離を置き、この世の動きを見ることは可能なのか。もし可能なら、どのように映るのか。この本は、われわれの近過去の歩みをそうしたさめた眼(め)で眺め、その光景を描いたスケッチブックのような一冊。 著者の眼はさめて(、、、)いるが、イデオロギー好きの者には冷めて(、、、)感じられようし、イデオロギーから離れた者には覚めて(、、、)、または醒めて(、、、)いるように思える。 さめた眼は科学者の観察と同じだが、しかし自分たちの歩んできた道を、科学のように数式や図形で表すことは出来ない。言葉によるのが一番いい。言葉は、抽象能力と同