■商都の土から“無垢”な実像を掘り出す 以前、朝日新聞が「ゼロ年代の50冊」というアンケート企画を実施した際、私は迷わず『アースダイバー』を選んだ。縄文期の地図と現在の東京を重ねることで、古代からの地勢がそれぞれの街の成立に根深くかかわっているとわかり、いたく興奮したからだった。 土地の歴史や記憶をたどるアースダイビングの手法は、人間の勝手な思惑でできているように見える街の表層を剥がし、真の地肌を顕わにする。その作業には当然、膨大な参考資料や証言が不可欠となる。東京篇から7年後に刊行されたこの大阪篇でも、中沢新一はそれらをふまえつつ自身の知見を総動員し、無垢な大阪の実像に迫っている。 固い洪積層を土台とした東京とは違い、「くらげなす」土砂層の上につくられていった大阪。古代、南方や朝鮮半島から海民が上陸し、上町台地や生駒山の麓に暮らす先住民と出会うのだが、弥生式の生活様式を持つ彼らは、新たに
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