鬼に体を刻まれる「なます地獄」、煮えたぎる釜に入れられる「かまゆで地獄」……。色彩豊かに描かれた地獄絵を紹介した子ども向け『絵本 地獄』(風濤社)が売れている。今年に入りすでに6万部を増刷し、累計発行部数は17万部になった。 この絵本に使用されている地獄絵は、1784年(天明4年)に江戸の絵師によって描かれた絵巻で、千葉県南房総市の延命寺が所蔵する。風濤社の高橋栄代表は「先代の父親が思いついた企画でした。発行当時は子どものいじめや自殺が社会問題になり始めたころです。地獄の言いつたえを子どもに見せて『人をいじめたり命を粗末にしたりすると、大変なめにあうぞ』という構成を考えました」と話す。 1980年8月の初版は5千部だった。発売後数年は「書店にまず置いてもらえるかどうかが鍵」だったという。可愛らしい絵本が並ぶ児童書のコーナーでは表紙・内容があまりにも異質だからだ。それが書店員の口コミなどで徐