よみがえる田村隆一 戦後詩リード、全集完結2011年5月11日10時49分 田村隆一 戦後詩を主導した詩人田村隆一(1923〜98)の初の全集が完結した。成熟した詩人の詩と散文が現代へ鮮やかによみがえる。 二つの世界大戦を経験した20世紀の文明は多くの人を殺し、物を壊したが、もっとも破壊したものは「言葉と想像力」だった、と田村は考えた。戦争によって現代人の心は、廃虚と化してしまったと。この認識から生まれたのが、戦後思想詩の記念碑とされる初期の代表作「立棺(りっかん)」だ。 「わたしの屍体(したい)を地に寝かすな/おまえたちの死は/地に休むことができない/わたしの屍体は/立棺のなかにおさめて/直立させよ/地上にはわれわれの墓がない/地上にはわれわれの屍体をいれる墓がない」 これまでの詩の言葉と想像力では表現しようもない「3・11」の惨状を体験した今、半世紀以上前の詩句が黙示録のように響く。