文春新書が創刊されたのが、今からちょうど10年前の98年の10月で、その第1回配本の中で特に注目を集めた作品が、吉川元忠著の「マネー敗戦」だった。98年、日本は前年の山一・北拓破綻から続く金融危機の渦中にあり、不良債権処理の問題で苦悩していた。7月の参院選に敗北した橋本政権が退陣して小渕政権となり、宮沢喜一が「平成の高橋是清」と称して不良債権処理のために蔵相に就任、そして10月の金融国会で「政策新人類」が立ち回って金融再生法が成立、10月23日に長銀が国有化される(12月には日債銀も)。金融国会と長銀国有化のニュースが毎日のテレビ報道を埋めているとき、「マネー敗戦」は出版された。当時、吉川元忠は、雑誌などへの論文寄稿で少しは有名な存在だったが、それが「諸君」など右翼系雑誌に限られていたため、私は一度も読んだことがなかった。今回、どうしても読み返したくなり、最後まで一気に読み通した。私にとっ
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