今回のテーマは、「人材は育っているか」である。CD制作に欠かせない優秀なディレクター、エンジニアの仕事は熟練の技と知恵を要する難しいものだが、とりあえずマイクを立てれば音は録れるから、逆に簡単だという極端な意見も聞かれる。これまでは会社が熟達したプロを育成してきた。が、今ではそんな余裕はなく、素人を現場に送り出してしまう例さえ見受けられる。それで本当に優れた作品と呼べるアルバムが作れるのか、そして人材が育つのか。川口義晴さんは自身のキャリアを振り返りながら熱く語ってくれた。 川口: 日本コロムビア(現・コロムビアミュージックエンタテインメント)はドイツ・グラモフォン(DG)などとは違ってギャラの高い演奏家との録音はやっていませんでした。オーケストラだってほとんど共同制作。いわば、元の取れる仕事をしていたんです。だから、地道にやっていればメジャー・レーベルに伍してやっていけたはずなんです。し