『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』には、ある“気分”が満ちている。それは乾いており、ピリピリしたものだ。人間が愚かなものであるのを認め、苛立っている。世界が不幸で満ちているのが分かっており、憂いている。それと同時に「所詮そんなものだ」という諦観もある。そんな“気分”だ。 その“気分”は全編に溢れている。ひとつの場面も、ひとつのセリフも無駄にせず、“気分”をフィルムで表現するために使っている。その“気分”が、富野由悠季監督のパーソナルなところから生まれている事については疑いようもない。そこまで極端な事を言う人間は、ファンの中でも少ないだろうと思うけれど、僕にとって『逆襲のシャア』は、その“気分”を楽しむための映画だ。 冒頭から観てみよう。ファーストカットは月面である。次の場面はアナハイムの工場で、チェーンとアナハイムのオクトバーが話をしている。チェーンが、建造中のモビルスーツの重量が3キロ減