11月に入って庭のドウダンツツジが赤く色づき、斜めから射す光を浴びています。夏の太陽は頭上から照りつけるけれど、冬を控えたこの時期は真昼も空の低い位置から光が射し、景色が輝いて見えるのはそのせいだろうか...と、ふと思いました。 「古本食堂」(原田ひ香、角川春樹事務所)は、穏やかな午後の休日に読むのがぴったりの小説です。リラックスした心に沁みてくる、何気ない、でも旋律が楽しいお気に入りの曲のような。 東京・神田神保町の表通りから外れた鷹島古書店。長年営んできた男性が急死し、北海道帯広市から上京した妹の珊瑚がとりあえず店を引き継ぎます。遺産を処分して北海道に戻りたいけれど、兄への愛着がそれをためらわせる。珊瑚の年齢について具体的な説明はありませんが、両親を看取ったたぶん60代後半の独身女性。 店の品揃え、値付け、一つひとつに兄の意思が遺されています。珊瑚がガラガラと店のシャッターを上げて、1