メモ:フィクションの中の感染症 稲葉振一郎(明治学院大学) ・そもそも近代フィクションの起点には感染症がある――ボッカッチョ『デカメロン』 14世紀ペストから疎開(自己隔離)した人々が無聊を慰めるための語り、という形式 ・他に文学史上著名なペスト文学はウィリアム・(18世紀)、アルベール・カミュ『ペスト』(20世紀) ・パンデミックや急性・劇性感染症ではないが、結核やらい病も感染症であり、結核文学・ハンセン氏病文学は日本近代文学史上固有の意義を持つ。 ・80年代以降のHIV文学もやや類似した展開を示す。 ・コレラやインフルエンザ(スペイン風邪)の影が落ちた作品も多い。実は近代文学総体に感染症はメインテーマではなくとも挿話として相応の存在感を持っているとさえいえる。 ・「極限状況」「不条理な運命」の体現としての感染症 ・特にブラム・ストーカー『ドラキュラ』以降のジャンルとして確立した吸血鬼も