便利、好都合なことを意味する中国語の便當が語源だそうです。だんなもおくさんが料った辨当を職場に持っていき、お昼に食べていた時期がありました。蓋に手を掛けると何とはなしに心弾みます。各人各様、色々と思い入れや思い出があるたべものではないでしょうか。手許の書冊に索めても、辨当に関する著述は縷縷多出して参ります。今日は種もないので、以下無作為に抜萃借用致しました。 「向田邦子/夜中の薔薇、食らわんか」 海苔弁である。まずおいしいごはんを炊く。十分に蒸らしてから、塗りのお弁当箱にふわりと三分の一ほど平らにつめる。かつお節を醤油でしめらせたものを、うすく敷き、その上に火取って八枚切りにした海苔をのせる。これを三回くりかえし、いちばん上に、蓋にくっつかないよう、ごはん粒をひとならべするようにほんの少し、ごはんをのせてから、五分ほど蒸らしていただく。 「松浦弥太郎/日々の100、べんとう箱」 曲げわっぱ