こんな選挙は見たこともなかった総選挙の3日前、息子の学校の前でPTAが労働党のチラシを配っていた。「私たちの学校を守るために労働党に投票しましょう」「保守党は私たちの市の公立校の予算を1300万ポンド削減しようとしています」と書かれていた。息子のクラスメートの母親が、「労働党よ。お願いね」とチラシを渡してくれた。 その翌日、治療で国立病院に行くと、外の舗道で人々が労働党のチラシを配っていた。「私たちの病院を守るために労働党に投票しましょう」「これ以上の予算削減にNHSは耐えられません。緊急病棟の待ち時間は史上最長に達しています」と書かれていた。配偶者が入院したときに良くしてくれた看護師がチラシを配っていた。彼らはみなNHSのスタッフだと言っていた。 今年で英国に住んで21年目になるが、こんな選挙前の光景は見たこともない。 一般庶民が、(それも、これまではけっこうノンポリに見えた人々まで)そ
英国のPMQ(Prime Minister’s Question Time)が面白くなってきた。英国議会では、毎週水曜日正午から30分間、首相VS野党第一党の党首、その他の各党議員との質疑応答の時間がある。BBC2が毎週生中継で放送しており、世論への影響力の大きい番組だ。 このPMQは、政治家というより天才パフォーマーだったトニー・ブレア首相の時代が面白かった。が、彼がいなくなってから、はっきり言って退屈になっていた。 しかし、新労働党党首のジェレミー・コービンが再びこのPMQを面白くしている。 彼は、「PMQは芝居がかった見世物的イベントになり、質問する側も答える側も本気で政策について話し合っていない。僕はこれを根本から変えたい」と発言し、野党第一党の党首として初登壇した日は、一般の人々からネットで募集した質問を読み上げるいう前代未聞のことを行った。 この奇襲作戦は「新鮮だ」と評価された
「6月8日の総選挙は保守党の大勝」と二週間前に東京で言いまくってきたわたしだが、全くそうじゃない事態になってきた。今月初めまで20%開いていた与党保守党と労働党の支持率の差が、6%(ITV「Good Morning Britain」のためSurvationが行った 5月29日の調査)まで急速に縮まり、コービン党首率いる労働党が奇跡の猛追を見せている。 メイ首相のオウンゴールこのような事態になった発端は、保守党が「認知症税」と呼ばれる悪名高き高齢者ケア案をマニフェストに盛り込んだことにある。これは高齢者ケア費用の複雑な分担の新案だが、要するに高齢者の持ち家を死後に手放させることによってケア費用を負担させ、しかも「一年の無給ケア休暇を認める」という働き方改革案とセットになっていたため、「要するに高齢者と家族の資産と労力を使って高齢者ケアをやれ、国はもう財政支出しません、という究極の緊縮政策じゃ
英国を世界社会主義革命の発火点に[英イングランド北西部リバプール発]英国の欧州連合(EU)離脱交渉が瀬戸際に追い詰められる中、リバプールで最大野党・労働党の党大会が9月23日から4日間の日程で始まりました。在英の日系企業は「本当のリスクは労働党のコービン政権の誕生」と戦々恐々です。 強硬左派ジェレミー・コービン党首(69)を支える女房役ジョン・マクドネル影の財務相(67)が24日、演説。マクドネル氏は筋金入りのコービン党首より「左」と言われる正真正銘の社会主義者。英国で資本主義を終わらせるのはこの男しかいないと言われてきました。 コービン党首になって19万人だった党員は昨年12月時点で56万4000人を突破し、党員数では欧州最大となりました。保守党のメイ政権によるEU離脱が脱線して労働党のコービン政権が誕生すれば、経済財政政策はマクドネル氏に一任され、英国に新社会主義(公有化)革命が起こる
ジェントリフィケーション。 という言葉が英国で大きくクローズアップされている。 「高級化、中産階級化。劣悪化している区域に中流階級あるいは裕福な階級の人口が流入していくのを伴った区域再開発・再建プロジェクトのことで、通常それまでの貧困層の住民が住む場所を失うこと」とアルク英辞郎では訳されている。 話題の労働党新党首ジェレミー・コービンは、「ソーシャル・クレンジング」という言葉を用いてジェントリフィケーションについて語ることが多い。近年、ロンドンの労働者階級の街でそうした状況が着々と進んでいることが彼の住宅政策の動機になっている。 9月26日の夜、アンチ・ジェントリフィケーションの抗議活動がロンドン東部ショーディッチのシリアル専門カフェ「シリアル・キラー・カフェ」の前で発生し、暴動に発展しかねない状況になった。集まった数百名の抗議者たちが店のウィンドウにペンキを投げつけ、警察をかたどった人形
こういう見出しを書いていることさえ数カ月前を思えば信じられないが、「マルクス主義の爺さん」と揶揄されたジェレミー・コービンが、下馬評どおりに労働党党首に選ばれた。第一ラウンドで59.1% という圧倒的な得票率は、トニー・ブレアが党首に選ばれた時よりも高いという。 党首発表の会場の後方に座っていた地べた党員は大喜び、前方に座っていた幹部議員たちは目が笑ってない、と、これほど党内の「上」と「下」で反応が違う党首発表もなかった。 しかし、第一ラウンドで59.1%という圧倒的な数字を鑑みれば、いますぐに労働党議員たちが画策してコービンを失脚させることはできないだろう。アンディ・バーナムを推していたブレア時代の副党首ジョン・プレスコットも、BBCニュース24のアナウンサーに会場でつかまると「これは素晴らしい日だ」「伝統的な労働党の価値観が勝利した」と答えていた。あれを見ていると、この人たちはこの勢い
5月の英国総選挙で大敗した労働党が、えらいことになっている。 党首選で「絶対勝つわけがない」イロモノ候補者の筈だった66歳のジェレミー・コービンが、「このままでは勝ってしまう」状況だからだ。 彼は絶滅寸前だった労働党内左派の代表で、「極左」または「マルクス主義者の爺さん」と呼ばれる人である。しかも、オフィシャルに「最も経費を使わない国会議員」になったことがある人で、その生真面目さでさえ現代社会では「クリーン」ではなく「貧乏くさい」と笑われてきた。 巧みなPR、ルックス、若々しさ、セレブっぽいライフスタイル。トニー・ブレア以降、英国の政治指導者には必須であると言われた華々しい要素をコービンは何ひとつ持っていない。むしろ、そのアンチテーゼのような人だ。 大政党の党首候補なのにナイトバスに乗って帰宅するコービン。こういう人が「公共投資拡大」だの「計画経済」だの、まるで終戦直後の労働党のような社会
著書『21世紀の資本』の日本語版発売に合わせて来日し、東京都内の日本記者クラブで会見する仏経済学者トマ・ピケティ氏(2015年1月31日撮影、資料写真)。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA 【9月28日 AFP】英労働党(Labour Party)は27日、ジェレミー・コービン(Jeremy Corbyn)新党首(66)の経済政策を支える諮問委員会のメンバーに、仏経済学者トマ・ピケティ(Thomas Piketty)氏とノーベル経済学賞受賞者の米経済学者ジョセフ・スティグリッツ(Joseph Stiglitz)氏を選任したと発表した。 経済諮問委員会は、労働党の「影の財務相」ジョン・マクドネル(John McDonnell)氏の下で年4回招集され、党の経済政策構想を練る。 ピケティ氏は、富の不平等問題を説いた著作「21世紀の資本」がベストセラーになった。一方のスティグリッツ
英労働党の新党首ジェレミー・コービンが早くも苦境に立たされている。 労働党の中でも左端に位置する彼がこの時期に党首になったというのは不幸な巡りあわせだったかもしれない。難民・移民は大挙して欧州に押し寄せているし、シリア情勢はロシアの介入でカオティックだ。怒涛の時代に大政党をまとめるのはそれでなくとも容易ではない。 労働党内部から「シリアに軍隊を送るべき」という声が出ている。 左派紙オブザーヴァー(実質的にはガーディアン紙の日曜版)に労働党議員のジョー・コックスと保守党議員のアンドリュー・ミッチェルがジョイントで記事を発表した。コックスは元オックスファム幹部であり、人道支援のバックグラウンドから議員になった人だが、その彼女が保守党議員と一緒に「シリアの市民が安全に過ごせるヘイヴンを警護する目的で英軍を派遣すべき」と主張しているのだ。 「シリアの状況を解決するために軍隊を用いるのは倫理的に間違
www.buzzfeed.com 急立ち上げだった立憲民主党(立民)が躍進した影には、SEALDsの協力があった、という記事。 SEALDsの行う活動に関しての評価はさておき、ちょうど読んでいたブレイディみかこ「労働者階級の反乱~地べたから見た英国EU離脱~」に引っかかる部分があった。 【スポンサーリンク】 円周の内と外 この「労働者階級の反乱~地べたから見た英国EU離脱~」では、労働者階級の男性と結婚し、現在も英国に住むブレイディみかこ氏が、トランプ現象と同一に扱われがちな英国のEU離脱(ブレグジット)が、本当に同じものなのかどうかに疑問を持ち、それを確かめるため英国労働党の歴史を振り返るなどした一冊。 ブレイディ氏が、友人らに英国離脱について直接聞いていたりするのも、現地に住む著者ならでは。 日本ではわからない生の意見も多く、読み応えがある。 中でも英国と米国での労働者階級の認識の差が
まるでスコットランド独立投票の再現6月23日に行われる英国のEU離脱投票が、まるで2014年のスコットランド独立投票直前のような様相を呈してきた。 首相も野党第一党の党首も国民に残留を呼び掛けているし、離脱派の右翼政党UKIPも数年前の勢いは失っている。それなら余裕で残留派が勝ちそうなものだが、ついに離脱派がリードという世論調査結果まででてきた。世論調査は会社によって微妙に数字が違うものだが、6月6日に発表されたYouGovの世論調査では、45%がブレキジット(BREXITーーBRITAIN +EXITの造語)、つまり離脱を希望しており、41%が残留希望という数字が出ている。 「いやー、もう今回は、何もかもすべてが分裂しているね」 とわたしの配偶者も感慨を述べているように、保守党と労働党の二大政党が「残留派」と「離脱派」に別れて党内分裂しており、特に保守党は次期首相の座を狙う元ロンドン市長
パリの同時テロを受け、フランス地域圏議会選で極右政党の国民戦線(FN)が歴史的勝利を収めたそうだが、英国では、シリアへの空爆拡大が下院で可決された2日後に、「強硬左派」ジェレミー・コービン党首が率いる労働党が白星をあげた。 コービンが労働党首となって最初の補欠選挙となったオールダム・ウエスト・アンド・ロイトンの選挙で、苦戦するという予想を覆して労働党候補者が圧勝したのだ。 空爆拡大の是非を問う下院採決では、60名を超す労働党議員が党首に従わず空爆拡大賛成派に回り、労働党はいよいよ分裂かと取り沙汰されていた。特に、影の外相ヒラリー・ベンが、イラク戦争開戦前夜のトニー・ブレアの演説のコピーのようなアゲアゲ系スピーチで「ファシストと戦うのが英国のトラディション」などとぶち上げて大絶賛されたものだから、「コービン体制は終わる」「ヒラリー・ベンが新党首か」と囁かれ始めていた。 が、そのわずか2日後、
英国労働党党首ジェレミー・コービンが、スペインのポデモスら欧州の反緊縮派政党と連合を結成し、EUのラディカルな改革を求めて共闘する構想を明らかにした。 以前からEU懐疑派として知られているコービンは、6月のEU離脱の是非を問う国民投票では、労働党党首としてEU残留支持の立場を取っている。しかし、同じくEU残留支持のスタンスのキャメロン首相がブリュッセルで行って来たEU改革案交渉の成果には、「彼の交渉は自らの政党の反対者たちを納得させるためのものであり、英国の人々がリアルに抱えている問題とは関係のない交渉しかして来ていない」と激しく批判している。 コービンは、英国労働党やスペインのポデモス、ギリシャのシリザといった欧州議会の中の社会民主主義政党が結束し、遥かにプログレッシヴな改革を求めてEUと交渉せねばならないとインディペンデント紙に語っている。 コービンは、EUが推進している緊縮財政政策を
英野党第一党、労働党のジェレミー・コービン党首がかつて旧チェコスロバキアの情報提供者か協力者だったという疑惑が、一部の英メディアや与党・保守党議員によって取りざたされた問題で、コービン氏をスパイ呼ばわりするツイートをした与党・保守党の下院議員が24日、公式に謝罪した。 保守党のベン・ブラッドリー下院議員は、「2018年2月19日に私は自分のツイッター・アカウント(@bbradleymp)において、ジェレミー・コービン氏について深刻で侮辱的な発言をし、共産圏のスパイに英国の機密を売り渡していたと書いた」とツイートした。 議員はさらに、「私は侮辱ツイートを、後に削除した。コービン氏が選ぶ慈善団体に金額を公表せず、相当額を寄付することで合意した。またコービン氏の法的費用も支払う」と書き、「事実と異なる虚偽の発言を投稿したことを深く遺憾に思い、ジェレミー・コービン氏に不快な思いをさせたことを、ため
それはある晴れた夏の日のことだった。 鬱気質であまり明るい人間ではない筈のうちの連合いが、爽やかな笑顔を浮かべてロンドンから帰って来た。癌の検査で病院に行って来た男が、また何が嬉しくてこんな陽気な顔で帰ってきたのだろうと訝っていると、彼は言った。 「ロンドンがいい感じだったよ」 「いい感じって?何処が?」 「いや全体的に」 と言って口元を緩ませている。 「なんか、昔のロンドンみたいだ。俺が育った頃の、昔のワーキングクラスのコミュニティーっつうか、そういう息吹があった」 相変わらずわかりづらい抽象的なことしか言わないので、具体的にどんな事象が発生したのでその「息吹」とやらを知覚したのかと問いただしてみると、こういうことだった。 自分が行くべき病院の場所を知らなかった連合いは、ヴィクトリア駅前のバスターミナルに立っていた。おぼろげにこっち方面のバスだろうなあ、と思いながらバス停のひとつに立って
欧米反緊縮左翼のコンセンサス イギリスのジェレミー・コービン党首の労働党やアメリカのサンダース派、フランスのメランション派や黄色のベスト運動、スペインのポデモス、ヤニス・バルファキス元ギリシャ財務相の始めたDiEM25など、近年、欧米では反緊縮左翼が台頭しているが、そのコンセンサスとなっているのは、次のような見解である。 彼らは「財政危機論」を新自由主義のプロパガンダとみなしている。財政危機を口実にして財政緊縮を押し付けることで、公的社会サービスを削減して人々を労働に駆り立てるとともに、民間に新たなビジネスチャンスを作り、公有財産を切り売りして大資本を儲けさせようとしていると見なす。 したがって、財政緊縮反対は政策の柱である。逆に、財政危機論にとらわれず、財政を拡大することを提唱する。 その中身として、医療保障、教育の無償化、社会保障の充実などの社会サービスの拡充を掲げるのはもちろんである
8月6日、ロンドンのタヴィストック・スクエアでも広島原爆死没者追悼と核兵器廃絶を訴えるCNDの式典が行われ、話題の労働党首候補、ジェレミー・コービンが、例年とまったく変わらぬスタンスでのスピーチを行った。 「核兵器は防衛ではない。核兵器はセキュリティでもない。それなのに依然としてそこにあります。僕たちは1945年に核兵器で命を落とした人々、核兵器の実験で苦しめられた人々のことを思い出し、それは不必要であり、二度と繰り返してはならないと言わなければなりません。英国社会は、我々なりの貢献をしなければならない。それは、核軍縮に向かって踏み出すぐらいのことではなく、(スコットランド東岸にある英国唯一の核兵器)トライデントを更新しないことです。潜水艦や核爆弾を作っている人々は最高峰の素晴らしい技術を持っています。彼らのスキルは失われてはいけません。それは別のことのために使われるべきです。防衛多様化機
US Democratic presidential candidate Bernie Sanders speaks during a rally in Atlantic City, New Jersey, on May 9, 2016. / AFP / Jewel SAMAD (Photo credit should read JEWEL SAMAD/AFP/Getty Images) 1ヶ月前、私は「バーニー・サンダースの勢いが止まらない 若者の熱い支持は世界を変えるか」(「太陽のまちから」2016年4月12日) と題したブログを投稿しました。公開直後から大きな反響をいただき、記事は多くの人々に読まれました。共和党の予備選では、ついにトランプが独走状態に入りました。テッド・クルーズ上院議員が選挙戦から撤退することで、「ドナルド・トランプ氏指名確実」の状況となっています。
英ロンドンの自宅を出る労働党のジェレミー・コービン党首(2016年6月28日撮影)。(c)AFP/BEN STANSALL 【6月29日 AFP】英野党・労働党の議員団は28日、ジェレミー・コービン(Jeremy Corbyn)党首(67)に対する不信任動議を採決し、圧倒的多数で可決した。これも英国の欧州連合(EU)離脱危機に端を発した動きだが、ベテラン左派で平和主義者を自任するコービン首相は辞任を拒否した。 労働組合からの支持を取り付けたコービン氏は昨年、一般党員からの圧倒的支持を得て党首に就任した。この日は議員229人が投票し、賛成172、反対40という大差で不信任となった。ただし、この動議に拘束力はない。 コービン氏の下では党は後退し選挙に勝てないと批判されながらも党首に就任したコービン氏は、「私は60%の一般党員と支持者らの後押しを受けて新しい政治のあり方を目指して民主的に選ばれた
オーストラリアのオンラインマガジンであるQuillette誌に掲載されていた「英国労働党は目覚め(woke)、そして破産(broke)した」という記事を訳してみた。 Woke は Wake (起こす) の過去分詞で、「社会正義に目覚めた(意識が高い)」ぐらいの意味で最近よく使われる。左派が自分たちのことを指すときにも使うが、右派が使うときは揶揄のニュアンスが入っていることもある。 筆者のトビー・ヤングは同誌のアソシエート・エディターだが、友人がニューカッスルのある選挙区で保守党から立候補したので、選挙運動を手伝ったという。英国では合法の戸別訪問をする中で彼が体験したことから、なぜ労働党が失敗したのかを考察します。 元記事の公開は2019年12月13日。選挙の翌日です。 quillette.com (翻訳ここから) 英国労働党は目覚め、そして破産した 2019年12月13日 トビー・ヤング(
2013年5月から始まった「米国金融緩和の修正」と「新興国経済失速」の二つの懸念材料を前座に従え、今年6月以降の上海株の急落や人民元基準値修正という「中国経済リスク」が真打として登場し、8月中旬以降の株式市場には大幅な調整局面が訪れることになった。日経平均は6月のピークから約19%、米ダウも5月の最高値から約14%それぞれ下落した。 9月の株式市場は一進一退の展開となったが、先般のFOMCでイエレン議長が利上げ見送りに関して中国を特に意識して説明したことは、FRBが「金融政策は国内要因で決める」という従来型の金融政策からの転換を余儀なくされた、という画期的な事実を示している。 となれば、物価には上昇気配が見られない上に、中国経済が益々怪しげなムードになっている以上、10月どころか12月の利上げさえ疑問視されても仕方がない。イエレン議長は先月24日の講演で「年内利上げが適切だ」との姿勢を貫い
イギリスがEU離脱を決め、アメリカではトランプ大統領が誕生。今年、フランス大統領選、ドイツ連邦議会選など重要な選挙が行われる欧州では、「さらにヤバいことが起きる」との予測がまことしやかに囁かれる。はたして分断はより深刻化し、格差はさらに広がるのか? 勢力を拡大する右派に対し「レフト」の再生はあるのか? 在英歴20年、グラスルーツのパンク保育士が、EU離脱のプロセスが進むイギリス国内の状況を中心に、ヨーロッパの政治状況を地べたの視点からレポートする連載。第1回は「労働党党首コービンがトランプ化している?」というトピックから。 労働党党首コービンがヴァージョンアップ? 新年早々、英国メディアに「コービン2.0」という言葉が出現した。コービンの側近が言い出したらしいこの言葉、どうやら「Mrマルキシスト」こと労働党党首ジェレミー・コービンの新春のイメージ・チェンジを意味しているらしい。 英国では1
2017年6月9日、イギリス下院議員選挙で、議席を伸ばした最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首はロンドン北部にある党首自身の小選挙区勝利を受けて挨拶。与党が解散総選挙を仕掛け、当初は与党勝利が予測されてきた中で、与党保守党を過半数割れに追い込んだという意味で大勝利でした。 今回の勝利の背景となっていたのはなんだったのでしょうか。それを知るために今回の挨拶から政策に関わる部分のみを抜き出しました。 この勝利宣言の中で政策に言及したのは、現在の保守党メイ政権による財政支出の過度な引き締めに反対する「反緊縮」政策だけでした。保守党を敗北に追い込んだのは緊縮財政に対する英国民の不満だったのです。 政党の選挙戦略というのは、複雑では、党の組織や候補者の末端まで届きません。ひとつの政策、しかも「反緊縮財政」というクリティカルな選択だけを掲げて戦ったところは、さすが経験豊富なリベラル政治家だと感じ
思えば、過去1年間の労働党は権力闘争に明け暮れてきた。EU離脱などという一大事に国が直面している時に、労働党がやっていることといえば党首選である。なんじゃそりゃ。と脱力するのは普通の反応だろう。 「欧州に新たな政治のフォースが覚醒したのは確かだ。次なる彼らのハードルは『運営』だ」と昨年わたしはここに書いたが、このハードルは高すぎたのだろうか。 先週末、英国労働党首選でジェレミー・コービンが圧倒的支持を受けて党首に再選された。驚くことではない。172人の労働党議員がコービンに不信任案を提出したときから、「またコービンが選ばれる」とメディアも巷の人々も言っていた。なぜなら、党というものは議員よりも末端党員のほうが圧倒的に多いのであり、その党員が彼を支持しているからだ。 トップダウンかグラスルーツか1987年に、左派運動家で学者のヒラリー・ウェインライトが書いた著書『Labour: A Tale
ele-kingの読者がギリシャ危機にどのくらい興味を持っておられるかは不明だが、この問題は金融・経済関係者だけに語らせておくには勿体ないサブジェクトである。個人的には、ギリシャのシリザやスペインのポデモス、スコットランドのSNPなどの欧州政治を騒がせている反緊縮派たちを見ていると、こっちのほうがいま音楽よりよっぽどロックンロールで面白い。英国総選挙前にケン・ローチが「これは英国だけの問題ではない。欧州全体での反緊縮派と新自由主義との戦いになる」と言っていたが、それがどうもマジではじまっている実感がある。 とまあこういうことを身近に感じるようになったのは、緊縮託児所(FKA底辺託児所)にまた出入りするようになったので緊縮というものについていろいろ考えるようになったということもある。 が、5年前ならこんなときにしこたま話をすることができたそっち系の人びと(AKAアナキスト)の姿をとんと見なく
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今や労働党党首選の大本命となったジェレミー・コ―ビン議員PhotobyJasn/CCBY-NC2.0ここのところずっとお伝えしている通り、労働党の党首選...Photo by Jasn/CC BY-NC 2.0 ここのところずっとお伝えしている通り、労働党の党首選で左派候補ジェレミー・コービンへの支持が急上昇しています。 先週はさらに、主に公共部門職員をメンバーとする大規模労働「ユニゾン(Unison)」と、通信労組CWUがジェレミー・コービンへの支持を表明しました。 加えて、前の記事でお伝えした、労働党の支部による党首選候補者の推薦投票が7月末で終了ししましたが、ジェレミー・コービンが、他の3人の候補を抜いて最も多い推薦を獲得しました。 さらには、デーリー・ミラー紙にリークされた「内部調査」で、またもやジェレミー・コービン当選の見込みが示されました。しかもこの調査では、第1ラウンドの
「生産手段の再国有化を」筋金入りの左派、ジェレミー・コービン氏(66)が英最大野党・労働党党首選の先頭を走る。投票は10日に締め切られ、結果は12日に発表される。「保守党サッチャーの跡取り」「米国のプードル」と揶揄されるブレア元首相とは明確な一線を画すコービン氏。影の薄い他の3候補とは人間の厚み、言葉の重みが違う。 コービン氏(筆者撮影)1990年代後半、若きブレアに率いられ、「ニューレイバー(新しい労働党)」ともてはやされた労働党は先の総選挙で惨敗して瀕死の状態。赤よりも赤いコービン人気は社会主義ユートピアへの束の間の陶酔を意味するのか、それとも新しい政治の誕生か。コービン氏を追いかけた。 ロンドンのリバプールストリート駅から列車で1時間40分弱。英東部ノーフォークのディス駅に着いたのは日曜日の7日正午過ぎ。偶然、コービン氏と同じ車両に乗り合わせ、「日本のジャーナリストです」とあいさつし
英国の最大野党・労働党の党首選で12日、急進左派のジェレミー・コービン氏(66)が新党首に選ばれた。保守党のキャメロン政権は2017年末までにEUからの離脱の是非を問う国民投票をする構え。コービン氏は候補者の中でただ一人、労働党の親EU路線の踏襲を明言しなかったため、EU離脱の可能性が高まるとの見方も出ている。 党首選は、5月の総選挙大敗を受けてミリバンド氏が党首を辞任したことに伴うもの。「影の内閣」の閣僚3人も立候補するなか、コービン氏は有効投票数の過半数を得た。知名度が低かったコービン氏が支持を集めた背景には、キャメロン政権が進めてきた緊縮策に対する反発がある。投票できる党員や登録サポーターら約55万4千人のうち、総選挙後に加わった人の多くがコービン氏を推す左派支持者とみられている。 EUは加盟国に対し、財政危機を脱するため、厳しい緊縮策を促している。コービン氏は、最大労組ユナイトの支
イギリスがEU離脱を決め、アメリカではトランプ大統領が誕生。今年、フランス大統領選、ドイツ連邦議会選など重要な選挙が行われる欧州では、「さらにヤバいことが起きる」との予測がまことしやかに囁かれる。はたして分断はより深刻化し、格差はさらに広がるのか? 勢力を拡大する右派に対し「レフト」の再生はあるのか? 在英歴20年、グラスルーツのパンク保育士が、EU離脱のプロセスが進むイギリス国内の状況を中心に、ヨーロッパの政治状況を地べたの視点からレポートする連載。第3回は、ブレグジット以降、ただただひたすら「後ろへ」つきすすんでいるかに見えるUK左派リベラルの混迷と、それとリンクした野党の凋落ぶりについてのレポート。 なぜか左派こそノスタルジック 「上でも下でもなく、右でも左でもなく、ただただひたすら前へつきすすめ」という文章を栗原康さんが『死してなお踊れ 一遍上人伝』(河出書房)で書いておられ、ふっ
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