「酔っぱらった船乗り」のように散財するという言い回しは、金融市場と政治分野の両方で米政府について用いられる決まり文句だ。資産家スタンレー・ドラッケンミラー氏から大手米銀JPモルガン・チェースの最高経営責任者(CEO)を長年務めるジェイミー・ダイモン氏に至るまでが、膨れ上がる米財政赤字を表現するのにこの言葉を用いてきた。 しかし現代貨幣理論(MMT)として知られる異端的経済学の関係者、ましてやこの理論を擁護するゴッドファーザー的な人物からこの言葉を聞くというのは想定外だろう。自国通貨建てであればデフォルト(債務不履行)のリスクはないというのが、MMTが柱とする主張の一つであり、そうした政府支出や借り入れを民間の家計債務と同じように理解するべきではないとの考えだ。従って理論的には、一般に理解されているよりも著しく柔軟な財政運営が許容される。 MMTブーム火付け役の一人となったウォーレン・モスラ