韓国的新型コロナ対策――監視と感染抑止のジレンマ 日本でもできること、できないこと 伊東順子 フリーライター・翻訳業 白服に制圧される街、地下にもぐる人々 新型コロナウイルス対策で加速する韓国政府はコーナーを曲がりきれるか 2月末、韓国南部の大邱市で起きた新興宗教団体での集団感染は、それまでスマートな対応を見せてきた韓国政府・疾病管理本部を大混乱に陥れた。 「あの31番患者が原因なのよね」 当時の韓国ではそう言われもしたが、それは確定診断の結果の順番にすぎず、31番、33番、34番、35番……と続く「確定診断者」(確診者、日本でいう「感染者」)のほとんどが新天地イエス教大邱教会の信者たちだった。人口250万の都市に連日100人、200人と新規の「確診者」が発生した。病院はどこもパンク状態となり、あわや医療崩壊とまでいわれた。 そこから危機を脱するまでの10日の間、政府は大きなルール変更を行