デジタル教科書への転換による学力低下リスク 読解における紙の優位性を示す科学的根拠に目を向けよ 大森不二雄 東北大学教授 政府は2024年度からデジタル教科書を本格導入する方針であり、2021年3月に公表された文部科学省の検討会議による中間まとめ(文部科学省 2021)は、紙の教科書を全てデジタル教科書に置き換える案、デジタル教科書と紙の教科書を併用する案等を示した。本稿の目的は、読解や深い思考の促進などの面で紙のデジタルに対する優位性を示す科学的根拠(エビデンス)が豊富に存在することを明らかにし、教育のペーパーレス化といった軽いノリで無謀な政策に踏み出せば、日本の子供達を学力低下のリスクにさらしかねないと警鐘を鳴らすことにある。 なお、あらかじめ誤解のないよう申し上げると、筆者は、AI教材をはじめ、教育効果のエビデンスに基づくICT活用を推進すべきとの基本的立場に立っている。だが、「IC