「何もかも失ってしまいました」−津波で工場を失った岩手県釜石市の会社経営者がNHKの中継で肩を落としていた。東京のスタジオから、玄田有史・東大教授(この経営者と以前から面識があったという)は力強く励ました。「何もかも失ったって言われたけど、大事なものが残っていると思うんです。それは技術力です。そして技術を生み出す人も残っているから大丈夫。必ず復活させてください」。 形のあるものだけが財産ではない。技術力やアイデアという「知的財産」は地震や津波でも壊れない。設備や原材料がなくても人さえいればその頭の中から生み出し、無限に増やすこともできる。 こう説明すると知的財産は理想的な「財産」のように見えるが大きな弱点もある。それは「見えない」ことだ。そのため、企業においても事業がうまくいっている平常時には「裏方」として表に出てこないことが多い。 資金調達、利益創出に知財活用を しかし、表舞台が危機的状