7月9日、土曜日。 アマゾンPrimeに小津安二郎の「晩春」(1949)が入ってゐるのを発見し、鑑賞。笠智衆演じる周吉と原節子演じる娘・紀子の物語。周吉は早くに妻を亡くし、娘との二人暮らし、いろいろ家のことをしてくれるので嬉しく思ってゐる。娘のほうも父のことが好きで嫁になど行かずそのままで楽しいと考えてゐる。 周吉には妻が、紀子には母がゐないために、この親子には異性のあいだにだけ生れるような独特の親和があるようだ。しかしいつまでもこの心地よい関係を続けることはできない。娘は夫を得るべきである。とうぜんこの親和は失われなければならない。映画の見どころは、父娘間の親和と緊張、それを体現する主演二人の名演。 新しい妻をもらうことにしたと娘にウソをつくシーンや、一人で林檎の皮をむくラストなど、笠智衆の迫力は凄まじいものがあった。老年にいたり娘を手放して孤独になる。男が孤独を引き受けて成熟する物語だ